<認知症の基礎知識> その4:ケアと介護 医師 岩井 雅之 |
13. ケアや心理療法
認知症では、患者さんの症状にあわせてケアしていくことも治療の大切な要素です。ケアには、精神的なケアと生活上のケアがあります。患者さんの状況により、ケアはそれぞれ違ったものになります。
また、施設などで実際に専門職(精神科の医師、各種療法士など)の方が行う心理療法も重要な治療です。回想法などの心理療法を行っている施設もあります。
◆リハビリテーションの必要性
脳血管障害の後遺症としてみられる自発性の低下や、活動性の低下によって認知症は増悪されるので、リハビリテーション治療の活用が必要となります。脳血管障害による認知症において、その中枢神経障害による後遺症は、片麻痺などの運動機能障害をはじめさまざまです。また、これらは運動障害を伴うことが多いため、寝たきりの予防も大切です。
◆脳血管障害による認知症における予防の重要性
脳血管障害を予防することは、脳血管障害による認知症を生じさせないために最も大切なことです。脳血管障害は、一度発作をおこすとそれを繰り返すことが多いため、再発の予防がとても重要となるのです。脳血管障害の予防には、脳血管に障害をおこしやすい条件(危険因子)を減らすために生活習慣を改善することも必要となります。
14. 介護の重要性
◆介護も治療のひとつです。
認知症では、薬物療法や非薬物療法のほかに、介護も重要になってきます。認知症の患者さんの介護は長期にわたるため、介護者はいろいろな出来事に直面します。認知症の記憶障害は非常に強いので、不可解な行動をとることがあるかもしれません。しかし、一方的にお年寄りを責めるのではなく、患者さんの身になって考え、対応することが何よりも大切です。介護者の対応によって認知症の症状は良くなるのです。
15. 介護保険制度
介護保険は2000年4月よりスタートした保険です。この保険が創設された目的は、いろいろありますが、主なものは以下の4点です。
保険の対象者は、65歳以上の第一号被保険者と、40歳から64歳までの第2号被保険者になります。第一号被保険者は介護の必要な人が全て対象ですが、第2号被保険者は特定疾病(初老期の認知症など15疾病)によって生じた障害が原因となって要介護状態になった人です。
医療保険との一番大きな違いは、本人(家族)の申請によってはじめて保険給付を受けることができる点です。市区町村の窓口に申請を行い介護保険の認定の審査を受けます。結果は自立,要支援1,要支援2,要介護1,要介護2,要介護3,要介護4,要介護5,の8つに分類されます。要支援1から要介護5までの方が介護保険のサービスを受ける事ができます。
サービスは在宅と施設に分けることができます。在宅サービスには次のようなものがあります。訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、通所介護、通所リハビリテーション、居宅療養管理指導、短期入所生活介護、短期入所療養介護、認知症高齢者グループホーム、特定施設入所者生活介護、福祉用具の貸与・購入費の支給、住宅改修費(手すり、段差解消など)の支給などです。一方、施設は介護老人保健施設、介護老人福祉施設、介護療養型医療施設の3つです。
これらのサービスを効率的・計画的に提供するために介護支援専門員(ケアーマネージャー)が介護サービス計画(ケアプラン)を作成し、介護保険を受けられる方に提供します。
16.最後に当院の宣伝を少々
老人性認知症疾患治療病棟(50床)が平成14年5月にオープンしました。医療と看護・ケアの上に成り立つやすらぎ、医療と優しさが一体化した理想に近い病棟です。明るく解放的な空間でクオリティの高い設備・仕様をはじめ、生活機能回復訓練室の天井には天の川をイメージしたライト群が埋め込まれ、優しい光が室内を包み込み自然の癒しを演出しています。14名(非常勤含)の精神科医師をはじめとし、各専門職が中心となり、ケアと介護を行っています。
また、敷地内に介護老人保健施設「希望」が併設されています。お年寄りの人生最後の時期をやさしさでつつんでさしあげたい、という想いから生まれました。広々とした清潔な空間の中でのリハビリテーションや治療を提供しています。楽しく快適な生活を過ごしていただくことによって、お年寄りの心を癒し、機能の回復を目指しています。一般入所100床(うち認知症専門棟50床)、短期入所(ショートステイ)、通所リハビリテーション(デイケア)が介護保険によって利用できます。上述したように、本人(家族)の申請によってはじめて保険給付を受けることができます。
詳しいことは介護老人保健施設「希望」078-944-1511までお気軽にお電話下さい。専門の相談員が懇切丁寧にご説明いたします。