統合失調症という病気について1 医師 山本 康二 |
精神科に通院されている多くの患者さんが、この病気と闘い、薬などを使って治療し、そして病気を持ちながらも一生懸命頑張って生活しています。
ではこの病気がどんなものであるかというと、患者さんやその家族の方々でも理解が困難であることが多いようです。
統合失調症という病気について、患者さん、家族の方々、医療従事者も含めて少しでも多くの人々に理解を得られたらと考え、話をさせて頂きます。
1. どれくらいの方が病気と闘っているのか?
生涯に統合失調症に罹るのは人口の約1%といわれ、単純に計算しても100万人程度の方が統合失調症に罹る可能性があると考えられています。これは世界各国でも同じくらいの確率で、男女差もほとんどないといわれています。
2. 何が原因なのか?
現在いろいろな研究がなされていますが、はっきりした原因はまだ見つかっていないのが事実です。遺伝子の異常もはっきりとしたものは見つかっていません。しかし、遺伝的な要因があるのではないかと考えられています。
では、実際に体のどの部分の調子が悪くなるのかというと、脳の神経の働きや脳の中のいくつかのホルモンの働きに問題が生じて起こるものと考えられています。また、一つの神経やホルモンだけではなく、複数のものがバランスを崩していると考えられています。
大事なことですが、決して性格の問題や育て方が原因ではないので、皆さんもくれぐれも誤解しないようにしてください。
3. どのように発病するのか?
一般的に10代後半から症状が出てくることが多く、通常の学校や仕事のストレスがきっかけとなることが多いようです。
何か特別なストレスでなくても症状が出現するので、このようなものは原因ではなく、たまたまきっかけになっただけと考えています。
皆さんもその時に色々思い悩まれると思いますが、「あれが原因だったんじゃないか?」と考えてしまうこともありますが、決して誰かに、また何かに原因があるとは考えないでください。
最初は、仕事や学校に行けなくなる、人と会ったり外出したくなくなる、物音や人の声に敏感になる、物事を考えようと思ってもうまく頭が働かない感じがする、自然に笑ったり喜んだりできなくなる、服装や身だしなみが気にならなくなる、その他不眠、食欲低下、頭痛なども出現し、一人一人の患者さんによって違うことも多いようです。
いずれにしても、多くの方がしんどい状態がしばらく続くうえに、家族や友人にも相談できず悩まれることが多いようです。
このような時期は決して一人で悩まず、怖がらず家族や友人に相談したり、病院で診察を受けて欲しいと考えています。
今回のまとめ
統合失調症という病気は、未だにはっきりと原因が分かっていません。
育児や教育によって起こるものでもありません。
病気になることは大変なことですが、決して誰かを責めたりしないでください。
病気の始まりが分かりにくいことがありますが、一人で悩まずに誰かに相談してください。
次回は、具体的な症状や治療法についてお話します。