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統合失調症という病気について4

医師 山本 康二

前回は統合失調症について、どのような治療が行われているかについて、特に薬物療法について話をさせていただきました。

第4回は、精神療法についてお話しさせていただきます。

3.精神療法

さて、一般に精神療法と聞いてもピンとこないことが多いと思います。前回お話をさせていただいた薬物療法は、身体療法とも言います。簡単に説明しますと、精神療法は医師と患者さんとのコミュニケーションによって患者さんの精神的な負担を減らすものです。例えば、カウンセリングのように言葉でやり取りをするもの、絵を描いたり、砂の上に物を並べたりなどすることもあります。薬物療法は必要不可欠ですが、それだけでは細かな悩みや不安の解消、それらを対処するための考え方や行動の仕方などの習得は、十分に効果が得られません。まず医師と患者さんの間で信頼関係を築いていけるように医師は常に考え行動する必要があります。

では実際にどうのように行われるものなのでしょうか?

4.精神療法の実際

患者さんの症状は、病初期には強く出ることが多いのですが、変な声が聞こえたり変な物が見えたり、誰かに見られていると感じたりしている時、患者さんは動揺し誰も信じられない心境になっています。こういった時は家族や医師がそういった幻聴を始め幻覚、妄想を否定しても、患者さん本人は本当にそう感じているので、なかなか受け入れてもらえません。こういった時でも何とか患者さんの不安を抑えるように、患者さんが安心して話せるよう、「受容」的な態度を心がけます。患者さんの話をよく聞き、その苦痛を理解し、「共感」します。さらに、なにかと悲観的で自己否定的になってしまっている患者の存在を肯定し、「尊重」します。

患者さんに対してこういった働きかけを継続的に行っていくことで、症状が徐々に改善していくと落ち着いて話ができるようになってきます。また信頼関係もできてくれば、次の段階の精神療法も可能になってきます。

患者さんは症状が改善してくると、より苦しいことが話せるようになり、医師もその苦しみを共有しやすくなります。

このころは一旦ちぐはぐになってしまった考え方や感情を少しずつ組み立て直す必要があります。カウンセリングだけでなく、行動を通じて、人と関わることで少しずつ患者さんの力で組み立てていきます。医師もこういった作業に関わり、時には無理をしないように、時にはそっと背中を押して患者さんと一緒に進んでいきます。

さらに症状がかなり改善しても不安がなくなるわけではなく、患者さんにとっては現実に向き合うようになるのでより不安や焦りを持ちやすく、自信が持てない状態になることが多いようです。現実に対してどう考え行動していくか、病気に対しての不安や将来に対しての焦りなどに関しても精神療法は必要だと考えられます。

いずれにしても、よりよい信頼関係がよりよい治療につながるのだと思います。

次回は、治療のその他についてお話します。

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