強迫性障害の治療には薬物療法とカウンセリングがもっともよく使われる方法です。
I)薬物療法
強迫性障害の方は、脳内の神経ネットワークに使われる、神経伝達物質の一種である、セロトニンの作用が弱い事が分かっています。
そこで、脳内のセロトニンを増加させるお薬を服用する事が現在では、最優先で行われている事なのです。
1)抗強迫性障害薬
a)クロミプラミン(商品名:アナフラニール)
元来、うつ病の治療薬であるこのお薬は、1991年にアメリカで強迫性障害に有効であると認められました。
このお薬は、脳内の神経伝達物質のセロトニンのみならず、同じ神経伝達物質のカテコールアミンも増加させます。
強迫性障害には、即効性があります。
副作用としては、のどの渇き、便秘等々があげられます。
b)フルボキサミン(商品名:ルボックス(藤沢)、デプロメール(明治))
b)パラオキセチン(商品名:パキシル)
このお薬は、脳内の神経伝達物質のセロトニンのみを増加させるお薬で、選択性セロトニン再吸収阻害剤(SSRI:Selective Serotonin Reuptake Inhibitor)と呼ばれています。
日本ではうつ病と強迫性障害に効果があると認定されており、比較的ゆっくりと効果を表すものです。
副作用としては、吐き気などがありますが、吐き気止めなどを服用すれば、最初の2週間程度で、
副作用は認められなくなるのが普通です。
2)抗不安薬
上記の抗強迫性障害薬に加えて、抗不安薬が用いられる事がほとんどです。このお薬は、その
名の通り不安を押さえる作用をもっており、何れも、ベンゾジアゼピンと呼ばれるものです。
ここでは、一般名は省略し、商品名を数種記しておきますが、この他にも数多くの抗不安薬があります。
レキソタン、デパス、ワイパックス、セルシン、コンスタン、セパゾン、レスタス、リーゼ等々
副作用としては、めまい、ふらつき、眠気などで、お年寄りには注意を要します。
3)その他の薬物療法
抗強迫性障害薬に加えて、様々なお薬が症状に応じて使用される事があります。
これは、その医師の判断によります。
II)カウンセリング
1)支持的カウンセリング
最もよく用いられるもので、患者さんの話を共感しながら、よく聞くという事が基本です。
2)行動療法
この療法は、日本ではあまりなされていない様なのですが、大変有効であると言われています。
基本的に、患者さんに怖いものに直面してもらい(暴露)、症状を軽減させる療法です。
例えば、感染を恐れるあまり、ドアのノブや公衆電話の受話器、電車のつり皮などに触れるのをいやがり、日に40回も手を洗う患者さんがいるとします。
最初のセッションでは、さわれないものに極力さわる様に支持します。
そして、手を洗う回数を減らす様にも支持します。
患者さんは、最初、比較的、自分が安全だと思われるものにさわる様にするのが普通ですし、また
回数も35回程度に減らすでしょう。
何にさわったか、何回洗ったかは、記録に残してもらい、次回のセッションの時に治療者に報告してもらいます。
治療者は頃合いを見計らいながら、もっと患者さんにとって汚いと思う物にさわるように、また、もっと手をあらう回数を減らす様に指示して行きます。
たまに、治療者は、普通の人以上に汚いものにさわる様に指示したり、手を洗う回数も普通以上に減らす様に指示する場合もありますが、これは治療に必要な為に行うものです。